やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「それで、何で盗むのは5,000万円なんですかいのぉ~。」
お爺さんが、尋ねる。
「それがね、僕達、運が良くてね。何か闇医者っていう人が、半額の5,000万円で心臓移植してくれるっていうんだよね、お兄ちゃん。」
「そうなんだ。しかも、その闇医者を教えてくれた人が、親切で5,000万円の稼ぎ方まで教えてくれたんだ。」
うれしそうに答える銀行強盗達。
「・・・・・・・・なんか・・・・いい奴なんじゃないか、あいつら・・・」
人質の一人がつぶやく。
「確かに・・・・別に拳銃で脅すこともしないし・・・・」
別の一人が言った。
「・・・・5,000万円くらい盗ませてやれよ・・・。」
誰が言ったのかわからないが、人質の誰かが言った後で、人質全員の視線が、銀行の支店長に注がれる。
「い、いや、そうは言いますけど、5,000万円も盗まれますと私の銀行での立場というものが・・・」
人質全員の冷たい視線を受けて、話し始める銀行の支店長。
「・・・・人の命より金の方が大事なのかよ。」
人質の誰かがつぶやく。
「それを言われますと返す言葉がないといいますか・・・・・。」
困ったような表情になる銀行の支店長。