やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・大和、そんなことは、いくらこの私でもわかりますよ。私が聞いているのは、何故、屋敷が火事になったのかという事です。私がディナーに出かけていた、ちょっとの間に何をどうすれば火事になるんですか?」
組長にいつもよりゆっくりと、そして怖いくらいに優しい声で問いかける執事。
「さ、さあ・・・?それは、俺にもわからないな?」
とぼける組長。
しかし、その顔からは、大量の汗をかいている。
「なるほど。大和が知らない間に、いつの間にか、火事になっていたというわけですね?」
「そ、そうだよ。そ、それそれ。俺の知らない間にいつの間にか火事になっていたんだよ。まったく、もう焦ったなぁ~。」
チャンスとばかりに執事の言葉に乗っかる組長。
「ヒナタさんも小夜さんも同じ御意見ですか?」
ゆ~っくりと組長から私と真木ヒナタに視線を移す執事。
「そうなんだよ。俺、驚いちゃったよ。気づいたら、辺り一面、火の海でさ。そこを俺は、小夜を助け出して、さらに、火の海に取り残されていたポチも助け出して。」
一瞬の躊躇もなく、堂々と嘘をつく真木ヒナタ。
真木ヒナタの目には、一切の罪悪感は、浮かんでいなかった。
「なるほど。大活躍だったのですね、ヒナタさんは。」
感心したような表情で真木ヒナタを見つめる真木ヒナタ。