ずっと一緒に*先生の青②




そもそも
近所のスーパーの
店員の多田くんと
青波が(っていうか私が)
親しいのかと言うと


全ては玉ねぎから始まった



今から3ヶ月ほど前
このスーパーで買った
玉ねぎを切ると
中が腐っていたんだ




夕方パパが帰ってきたら
取り換えてもらおうと思って
スーパーに電話すると



すぐさま
新しい玉ねぎを持って
家まで来たのが
多田くんだった




多田くんが来た時
ちょうど青波の機嫌が悪くて
怪獣のごとく泣き叫んでて



持ってきた玉ねぎと
お詫びの品の
箱ティッシュを私に渡し



「抱かせてもらって
いいですか?」



多田くんは
私から青波を受け取って



一発芸のように
変顔をした



多田くんの
涼しげな顔立ちから
想像つかないような
その変顔に



青波も私も一瞬呆気にとられ


多田くんが
「あれ?面白くない?」って
困った表情を浮かべたとたん



私が爆笑してしまった




それから買い物の度に
一言、二言 話すようになり
青波はすっかり
多田くんになついた





買い物を終えて帰り際
出入口で多田くんは
私を呼び止めて


「待って市花ちゃん」


買い物袋に入った
3連プリンを差しだし


「これ、陳列する時
ビニール爪で傷つけちゃって
売り物にならないんだ
だけど中身に問題ないから
持って帰って青波に」



「え、でも」


遠慮する私に


「いいから早く」


多田くんは強引に
エコバックにプリンを押し込み


「またのご来店お待ちしてます」と笑った





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