ぶるー。
 情けない、そんなことは百も承知だ。だけど今は、どうしても身動きが取れない私がいる。何もかもから取り残されて、私には何もなくなってしまったような気がした。何もいらないから消えてしまいたいと願ったけれど、大切なものを全てなくしてしまっても、まだ、私は消えてなくなったりはしない。それは叶わぬ願いなのだ。

 結婚式の招待状は、思いの他早く届いた。テーブルの上に放ってはみたけれど、視線を外すことは出来なかった。退屈な週末に、楽しくない知らせ。一人きりの部屋が、ぐんと広がったような気がした。
 ふいに携帯が鳴った。メールを開くと画面いっぱいに青空が広がった。
『雲ひとつない青い空です』
それはもう何年も見ていなかった田舎の空だった。そうだ、久しぶりにあの町に帰ってみよう。オレンジ色の夕焼けと、肩肘をついてふてくされた彼の横顔。もうすぐやって来るその日に、さようならとおめでとうが言えるように。
 デスクにレポート用紙を一枚、置いて来た。

『雲ひとつない青い空です』
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