名も無き花
駅行きのバスの中

バスの揺れと心地よい陽射が、あたまん中の、ある一軒の家に訪ねて来る。

ドアをノックされた。瞼が重い。


数分後、ドアが開いた。そこから、意識は夢の中。


バスの揺れと陽射は友のように、眠気に語りかけている。

「やぁ久しぶり」

「どうも♪」

「二人そろって来るなんて珍しいわねー、駅行きバスの揺れさんとお昼の陽射さん」

「そうかな?」

「まぁ確かに、そろうのは珍しいかもね」

「うちのご主人様は、しばらく買い出しサボっていたからぁ」

苦笑いしながら眠気がつぶやく。

「そうみたいねぇ、一ヵ月ぶりくらいかな?」

陽射が続く。

「まぁ、お二人がそろっていたら耐えられる分けないわぁ。すぐに私の目がさえちゃったし。」

眠気の目がさえる…俺の目が閉じる。

「そろそろ、着くみたいだぞ?」

バスの揺れがいう。

「あら、じゃあ私は寝るとしますかね。短かったけど楽しかったわ!また来てね。」

なれた口調で挨拶をする眠気。手を振る揺れと陽射。

あたまんなかに、流れる風。
涼しい空気。なだれ込む声。

「他にいらっしゃいませんか?」

……。!?

気が付いた、商店街前。慌てて出口に向かう。
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