名も無き花
【風の言葉:40ページ】より

あたしに初めて友達ができたのは、4ヵ月前。

中学に入って2年半、後にも先にも声をかけて来て、しかも友達になってくれたのは彼女だけだ。

彼女の声が、笑顔が、凍りきったあたしの心に爪をたてた。

ガチガチに凍った心を砕くのには一点の傷で充分だった。

音を立てて氷は崩れ落ちた。行き場を無くしていた感情が一気に流れ出す感覚を今でも覚えている。


この世のものとは思えない彼女の微笑みに、慈悲深き言葉にすがるように泣き続けた光景はついさっき起こったかのように鮮明に残っていて音までもが聞こえてくる。


そんなあたしの天使は、最近学校に来ていない……。
ちょっと会えないだけで見捨てられた気分になる。そんなあたしの心は、どれだけみじめな形をしているのだろう?
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