名も無き花
『それ』をどうすることもなく、家の中に入った。

正確には、どうすることもできなかった。

もっと言えば怖かった。



触れた瞬間に消えてしまいそうで。
数メートルの距離は果てしなく。
この夜に縮まる事はなかった。



鍵を回して、玄関をあけた。最近では珍しいスライド式のドアだ。

ガラガラっと言う音が『家だぁ』

って、実感をくれる。



真っ暗な我が家に明かりを灯した。
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