初恋
たしかにそうだ。

ぼんやり考えていたら――目の前のアキが、コーヒーカップ片手に聞いてきた。


「零はどうなの?やっぱ進学?」


あたしはうーんとうなった。

優柔不断な性格が災いして――いまだに進路を決めきれていない。


正直、今から就職活動をするのは遅すぎる。

周りの就職組が、大学3年の後半から就活を始めていたのを尻目に――あたしはのんきに暮らしていた。


だって、自分は大学院に進むものだと思っていたから。


ぶっちゃけ、大学生ほど遊べるものはない。

授業を受けるのも自由だし――平日に休みを作ることだってできる。


そんな素晴らしい大学生活を延長させようと、あたしは大学院への進学をもくろんだ。


しかし。

やっぱり現実はそう甘くはない。


専門分野がさらに深くなる大学院は、あたしにとってはなかなかの地獄だった。

院試の過去問見ただけで――あたしは考えを改めざるをえなかった。


「正直、まだ迷ってて...」


向かい側のアキは困った顔をしている。
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