僕の街には今日も雨(涙)が降る…。

四、素直な気持ち

 飛夏羽が泣き止んだ頃には夜の九時になっていた。
涙を拭いてベッドに座ると、其処へ翔太が入ってきた。

「飛夏羽…飯だってさ。」

 飛夏羽は首を横に振って翔太を見つめた。

「…如何した?」
「政略結婚…嫌じゃないの?」

 翔太は黙って飛夏羽のベッドに座った。

「…政略だし…仕方無いだろ。それに…俺は飛夏羽だから良いよ。」

 飛夏羽は翔太の手をそっと握った。

「はぐらかさないで。…はぐらかして嘘吐いたって…そんな嘘吐かれても嬉し
くない。」
「嘘なんかじゃねぇよ。…飛夏羽、これ見て。」

 翔太は洋服の裾を捲って飛夏羽に見せた。
翔太の手首には何個もの針の跡が付いていた。

「…それ…」
「…麻薬。」

 飛夏羽は驚いて翔太の目を見つめた。

 翔太は飛夏羽から目を逸らして飛夏羽の手首を優しく握った。

「飛夏羽は…こんな事になるなよ…約束しろよ。」
「…うん。」

 翔太は飛夏羽から手を放すと立ち上がりドアの前まで行った。

「…飛夏羽は良いのか?」
「え?」
「千葉の事…良いのかって。」

 翔太は振り向いて飛夏羽を見た。

 飛夏羽はそっと頷き、俯いた。

「…これで…良いんだよ。これで…何もかも…」
「…そっか。じゃあ俺…食ってくるな。」

 翔太はそう言い残して飛夏羽の部屋を出て行った。

 飛夏羽は自分の冷たい手で目を冷やし、そのままベッドに寝た。

「…空腹…紛らわさなきゃな…」

 飛夏羽は電気を消し、布団に潜り込んだ。

 明日は学校が待っている。

 優都に会うのは辛い、だが優都も逆に辛いのだ。

 飛夏羽は目をしっかりと瞑り、そのまま眠りについた。
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