PEACE
* * *
内国。
五つの国で形成されている世界の中心に位置する国だ。
その国の中心にそびえ立ち、誰もが目を引くであろう、その大きな城。
この国の王族が住む城である。
その城内にある、ただ一つの道場部屋。
そこに、奈久留の姿があった。
「やああああああ!」
奈久留は美しい宝石が装飾されたシンプルな剣を、大きく振り上げた。
だが、その隙をつき、奈久留の相手をしていた50、60歳ぐらいの男性が下から剣を突き付ける。
奈久留の顎には、男の剣先が鋭く光っていた。
それと同時に、奈久留は振り下ろそうとしていた剣の動きを止める。
首にかけていたペンダントがシャラン、と音をたてて揺れ、二人の間に流れてい
た気迫が消えた。
「あ~あっ、またダメだったー!」
奈久留は床に腰を下ろし、嘆く。
「はっはっはっ。お前もまだまだだな」
男は剣を納め、高笑いをする。
「おじいちゃん、いい加減歳なのに、なんでそんなに強いの!?」
「ふっふっふっ。だてに毎日筋トレしているわけではないぞ」
かれこれ稽古を始めて三時間。
何度負けたのだろうか。
彼の名は雷響 久司(らいきょうひさし)。
正真正銘の今年57歳を迎えた奈久留の祖父だ。
王の座を譲った祖父だったが、今はいない奈久留の両親の変わりに再び政治を行っている、ただ一人の血縁者でもあった。
そして彼女、雷響 奈久留(らいきょう なくる)。
この内国の王女だ。