愛果てるまで
盲目
想いを打ち明けられ、想いを打ち明け、その結果付き合うことになった。
付き合うと決まるとすぐに同棲も決まった。かほりの強い希望により。
「昔から、好きな人と一緒に住むのが夢だったんだ」
と言われたからには同棲するしかないだろう。もっとも俺にも同棲したいという希望が当然あったのだが。

同棲するようになるとかほりの手料理が振る舞われた。かほりの料理の腕は大したものでどれもこれも美味しくて、そして和食から中華、フランス料理からオランダ料理、スイス料理等々様々な種類の料理が作れた。
「かほりは料理が昔から好きだったの?」
と聞くとかほりは決まって
「昔はお料理とか全然ダメだったんだぁ。料理作るようになったのは最近だよ」
と答えた。最近か。最近始めた料理がここまでのものなのだ。相当量努力したか、やはり元から持ってる才能が開花したのだろう。どちらにせよ料理が上手なのは助かる。俺は食べるのは好きだが作るのは全く駄目で高校で家庭科の授業中、調理実習で嫌々作った記憶が料理に関する最も新しい記憶だ。それだってもう数年前なのだから料理はとにかく苦手なのだ。そのことをかほりに話すとかほりは意外なことを聞かせてくれた。
「私だって高校の時の調理実習ぼろぼろだったよ」
「え?」
俺は驚きの余り間抜けな反応になってしまった。その反応を聞きかほりは笑いながらも言った。
「高校の時の調理実習なら似たようなもんだよ!ほんと酷かったんだ」
「でもこの料理見る限りじゃ」
俺がそう言うとかほりは笑いを止めこう言った。
「うん…真剣に、必死に、苦しんでやったから」
その一言だけは何故か異様にはっきりと聞こえた気がした。しかし俺はかほりと目の前の料理に気を取られ大して気にも留めなかった。
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