プラチナの誘惑
「年をとって、見た目が崩れて。
親父から兄貴に社長が代わったら…俺は何の価値もないんだよな。

所詮、顔と親父の影で生きてるからな…」

「影…?」

小さく問う私の声は少し震え気味。
こんなに力無く話す昴の姿…初めて見る。

いつもの余裕も感じられないし周りをなめてる狡さも全く見えない…。

思わず手を伸ばしてしまいそう…。

「まあ…。
そうやって拗ねて。

親父の会社からは離れたいって言いつつ親父のマンションに住んでるし。

いい加減だよな…」

椅子の背に身体を預けている表情には諦めと寂しさ…。
そして、そんなマイナスの感情を受け入れた明るさもよぎっている。

「…建築だけは、自分で見つけた夢だからな。
それを仕事にできただけでもラッキーだな」

敢えて明るく話すのは、昴の気遣い。

「さっき、彩香が俺が金持ちか聞いてきたから…必要以上に反応して悪かったな。

…遅いし、寝るか…」

何事もなかったように立ち上がって、部屋に入る昴。

新しい昴を知る事ができて、今までより好きになったのに…。

体中が痛い。

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