プラチナの誘惑
「…兄貴に言いつけるからな」

せめてものイライラ解消に、低い声で脅すように言うと、

「…っ、それだけはやめてよ。
これ以上自由な時間がなくなったら、毎日泣くからね」

「…泣けば?」

「そんなぁ…奏の側にばかりいるようになったら仕事もできなくなるし」

「仕事なら、代わりがいくらでもいるし」

はっと息を止める芽実さんは、唇をかみしめながら。
俺を睨む。
綺麗な綺麗な顔でそんな表情されて…普通の男ならすぐに骨抜きになるんだろうな。

まあ…俺は例外なんだけど。

「いい加減兄貴に内緒でこの部屋に試作品持ち込むのやめれば?」

呆れた声を隠す事もせずに言い放つ俺に、何度目かの涙声で

「だって…デザインやめて次期社長婦人ってだけの毎日なんて向いてないもん」

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