プラチナの誘惑
忙しい二人にとって、一緒にいられる時間は限られているせいか、周りに誰がいようがお構いなしに抱き合ったりキスしたり…。

今だって俺の存在なんて消えてしまってるはず。

はあっ…。
俺と彩香の夜をだめにした事も、きっと忘れ去ってるんだろ…。

はぁ…。

自分にだけ聞こえる小さなため息をついて

「お二人さん、帰るから。家ん中でいちゃついてくれ」

車に向かうと

「待ってっ。渡したいのがあるからまだ帰らないで」

大きな声が聞こえた。

振り向くと、兄貴の唇に軽くキスをして家に駆け込む芽実さん…。

慌てながら

「絶対帰らないでね」

…何?

兄貴に視線を向けると、苦笑しながら首を横にふられた。

「…あいつは予想不可だからな」

くくっと笑う顔にも愛情があふれている。
昔から社長になるためだけに生きてきた兄貴の
こんな穏やかな顔…。
結婚してからは結構見るようになって…芽実さんの存在の偉大さを感じる。
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