プラチナの誘惑
「相変わらず新しいデザインやってるみたいだよ」

ぼそっと口にした瞬間、
まずかったかな…と緊張した。
けれど、兄貴には想定内の事だったのか軽く肩をすくめて

「…知ってる。
会社じゃ、俺の嫁ってのが邪魔してるからな。
なかなか好きにデザインできないみたいだ…。

もともと才能あるんだから…隠れてでもデザイン続けてたら、そのうち風も変わって。

前みたいに現場でばりばり仕事できるようになるだろ」

少し苦しげな兄貴の言葉は、そのまま芽実さんの状況。
好きな仕事を好きなだけできない次期社長の嫁っていう状況。

「兄貴がどうにかできないのか?
芽実さん…かなりストレスたまってるぞ。
俺の部屋にある試作品もかなりの量だし」

「…あいつには悪いと思ってるさ。
デザイナーとしての将来を丸ごと潰したようなもんだし。
向いてない会社経営の手伝いもさせてるしな」

明るく、服のデザインを天職として輝いていた芽実さんを嫁として迎えて…兄貴はずっと背負っている。

「俺のせいで、芽実の人生を変えてしまったのはわかってるし、こうなるのも予想してたけど…
それでも芽実を手放すなんて選択肢は今もないんだ」
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