ラブリーホーム*先生の青③




食事が終わったばかりなのか
病棟のエレベーターを降りると
配膳のワゴンとスレ違った




詰所で聞いた病室に
足を進める



ここはフミが入院してた
病院じゃないけど
病院ってのは似たような
匂いと空気だな………



足が重く感じるのは
後遺症のせいじゃない





全くの他人ではないけど
身内でもないのに
男一人で婦人科病棟は
少し気がひける



だけど、
何かヒントがあるとしたら
やっぱり、ここだ―――――




病室の戸口に立つと
4人部屋の一番奥に
郁弥の母親のベッドがあった



郁弥を迎えに行った時
挨拶はしてるから
顔を上げた川口さんは
あ、と言う表情をした




戸口で頭を下げたオレは
川口さんの傍らに
男性がいたから



失敗した―――――――――



タイミング悪すぎだろ、オレ



だけど、今さら引き返すことも出来ない



申し訳ない気持ちで
川口さんのベッドに近づいた



「お加減はいかがですか?」



お見舞いに持ってきた
果物を詰めてもらった
カゴを手渡すと
川口さんはベッドの上
座り直し、頭を下げた



「……わざわざ、すみません
おかげさまで………」




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