ラブリーホーム*先生の青③




何もってことはないでしょう
授業の下準備をする
パパの背中にしつこく聞く



「ねぇ、パパ
本当に何があったの?」


「何もないって」


「じゃあ、何でお義兄さん
電話してきたの?」


「……可愛い弟の声を聞きに?」


「んな訳ないじゃん!」


「はぁ~」って
長いため息をついて
パパは振り返って
私を見た



「お前には関係ない」




………関係ない?



私の表情が固まったことに
気が付いたのか
パパは ハッとして



「……あ、ごめん、違う
違うんだ、イチ
本当に大丈夫だからさ…」



……言いたくないことも
そりゃ あるでしょうよ



だけど、私たちは夫婦なのに



うつむいて
ひざの上に置いた手を
きつく握りしめた



しばらくの沈黙のあと
パパはもう一度
「違うんだ」と言って


私の隣に座り
ギュッと抱きしめて
髪を撫でた




「……親父が
入院したんだって」


「………え?」


お義父さんが?


パパの胸から顔を上げて
「悪いの?」って聞くと


パパは笑って首を横に振り


「全然だよ
すぐ退院できるって」


「それなら良かった……」


だけど
パパの笑顔は すぐ消えて


私の後ろ頭を
手のひらで包むようにして
また私を
自分の胸に戻した





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