ラブリーホーム*先生の青③




「……なあ、夜泣きって
いつ治るんだろーな?
だいたい2時間おきに
泣いてんじゃん


青波もさ、
寝不足になんないのかな?


…………イチ?
おい、イチッ!
聞いてんのか?」



「…………うん。
聞いてるよ
聞いてる」



ダイニングテーブルで向き合い
朝食をとる


青波はまだ
寝室で眠ってる


ずずーっと
お味噌汁をすすりながら
先生は


「あれじゃ
イチも大変だよな」


ええ、大変ですよ
なんせ旦那が浮気中ですから



……結局、一睡も出来なかった


ちなみに
メールを見ることも
出来なかった



あまりにも怖い
爆弾のスイッチのようで
ケータイのボタンを
押せなかったのだ



私の意気地なし





  「うえ――――――
  まああ――――――」




寝室から
青波の泣き声が聞こえて


「はあ」と
先生がため息をついた


そんな先生に
イラッとくる


私と青波を
裏切ってるアンタに
ため息つく資格なんてないよ



子供は泣くのが仕事だもん
脳が発達してるから
寝てる時に泣くんだもん




ぐずぐず泣く青波を
抱っこして
寝室を出ると



「じゃ、行ってくるね」



私の腕の中の
青波の頭をくしゃくしゃ撫で
玄関へ歩いて行く



靴を履く背中に


「………先生」


気がついたら
声をかけていた


「ん?」って振り返った
先生はいつもの優しい顔



だけど、もちろん
言えることは何もない



「……ううん
いってらっしゃ~い」


青波の手を取って
振らせる


先生は幸せそうに微笑み
「いってきます」と
家を出た





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