雨のあとに
『さっきから何の話しをしてるの?それよりシーバーはどうしたのよ!』

ヴィッセルはあたしの方に顔を向けて冷たく返事をした。

『運が良ければ生きているだろ、なかなか手練れだったからな手加減ができなかった。』

『そ、そんな・・・』

ショックでよろめくあたしに気にも止めず、ヴィッセルは背を向けた。

『時間の無駄だ。レディア、さっさとアレを連れて来い。仕事を済ませる。』

『あたしに命令すんなよな。』

レディアがレインに近づいて手を伸ばした。その瞬間あたしは覚悟を決めた。

大丈夫、シーバーが簡単に死ぬわけない。レインを守れるのはあたしだけ。この人達なんかにレインは渡さない。もう守ってもらうのはイヤ、あたしが2人を守りたい。お願い、あたしに力を貸して!鍵に思いを込めて剣に変えて構えた。

『レインに近づかないで!』

敵意むき出しのあたしに対して、レディアは面倒くさそうに頭をかいた。

『あん?ウゼーなあ!ヴィッセル、こいつイジメていいのか?』

『構わないが壊すなよ。後で必要になるかもしれん。』

『了解!』

レディアがあたしに手をかざすと、空気の固まりみたいのが飛んできてあたしの体は後ろに飛ばされた。

『おいおい、これで終わりか?弱すぎだな。』

レディアはつまらなそうに唾を吐いてかざした手を下ろした。あたしはよろめきながらもゆっくりと立ち上がってもう一度剣を構えた。

『・・・甘く・・・見ない・・・でよね。』

深呼吸をして自分を落ち着かした。戦い方はちゃんと教わったはず、レオンやエレットの練習を思い出すのよ。そっちが魔法を使うなら、あたしだって。

『力強い火よ、その偉大な力で我の前に立ちふさがる敵を蹴散らしたまえっ!!』

あたしは剣の先から火の玉を放った。

だけどレディアは簡単にあたしの魔術を避けた。そして壁にぶつかった火の玉を見ながら笑った。

『へえ、ちゃんと魔術使えんだ?面白い、こっちもドンドン行くよ。』
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