サクラリッジ

夜の蝶

食事をあらかた終えて、私たちはベッドにもたれて休んでいた。
変り種のロールキャベツは思いのほか好評で、皿はきれいになっていた。
このままベッドに寄りかかっていたら、間違いなく寝てしまう。
そう思った私は、本当は寝てしまいたい気持ちを抑えて、皿を流しに持っていくことにした。

自らの心に声に逆らった報いか、立ち上がると少しふらついた。
今なら、歩きながら眠れるのではないかと思うくらいに心地よい。
ふらり、ふらり。
皿をキッチンシンクにおいて、その上に水を流す。
手にかかった水が、眠気を少し覚ますような刺激を与えている。
しかし、かえってそれが眠気を誘った。
水しぶきが顔に当たったとき、私は一瞬だけ意識が飛んでいた。
なんともいえない気持ちよさ。
私は迷わずベッドに飛び込んだ。
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