サクラリッジ
「俺は醤油に関してはスペシャリストなんだ。見ただけでウスターソースとの違いがわかるんだぜ」

例によって下らない戯言を垂れ流していると、不意にかに玉は笑い出した。

「詩織のいう通りだ。毛布ってバカだ」

「でしょー。いつもこんなことばかり言ってるんだよ」

姉妹そろって私をバカにしているのに、まるで怒りなど涌いてこなかった。
バカにされるようなことを言っているという自覚もあったからだろうが、いつも寂しげな彼女が笑うを見ているのが心地よかったのかもしれない。

「実際に会うと優しくておとなしいってビュネが言っていたけど、ちょっと信じられないよね」

「優しくておとなしいかもしれないけど、バカなんじゃないの?」

女三人寄れば姦しいとはいうが、二人でも姉妹ならば三人分の働きをするのだろう。
私は圧倒されて、いつものような放言はできなくなっていた。

暑い夏の名残で開け放した窓から、風が吹き抜けてカーテンを揺らす。
いつの間にか秋は終わろうとしていた。
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