サクラリッジ

指と指の対話

私が学校に行かずに、昼間からだらだらとインターネットに没頭していた時期。
私は彼女の妹のかに玉と毎日のように話をしていた。
彼女から紹介された日から、ずっと。
いったい私の何が気に入ったのかわからなかったが、かに玉は積極的に話しかけてきた。
後になって、妹は私を気に入るだろうという、姉の目によるものだったのかもしれないと、考えることがある。

かに玉は、社員が三人しかいないような零細企業の事務をしていると言った。
電話の応対と、日々の事務処理が彼女の役割だ。
社長も他の社員も、普段は殆ど外に出ているので、事務所には彼女が一人だけということが良くあるらしい。
事務処理というのも簡単なもので、終えるのにそう時間がかからないそうだ。
結果、暇な時間が出来るので私に話しかけるというわけだ。
昼間から仕事もせずにインターネットに入り浸る人物など、私のほかには二人くらいしかいないと彼女は言っていた。
私以外にもいるというのが驚きだった。
が、その他の人物よりも私を話し相手に選んでくれたというのは、少し良い気分だった。
< 36 / 56 >

この作品をシェア

pagetop