おにぎり丼。
「ええ。確かに私は、エリコタンにストーカー行為をしました。でも過去のことですよ」

「エリコタン?」

「ええ。エリコタン、イケタンの仲でしたからね」

「付き合っていたんですよね」

「はい。もちろんです。ただ、別れたあとは、気が動転してしまって、いきすぎたこともしました」

「二郎ですね」

「そうです。彼も亡くなったんですってね。かわいそうに」


水色男……池乃平店長は、たまに見せるキモさを除けば、誠実で、きわめてまともな人間だ。

髪型も、今は、水色どころか、ハゲている。

若い頃に、髪を痛め付けすぎたことが原因だろうか。

体格も、私を襲った男とは違うように思える。

私の見た水色男は、池乃平店長ではない。


「エリコタンのことは、本当に残念でしたよ」

池乃平店長は、独り言のように言った。

「彼氏がしっかり守っていないのがいけないんですよね。ボクだったら、命懸けでエリコタンを守ったと思います」

「エリコの彼氏、知ってるんですか?」

「もちろん。何度も会ったことがあります」

「どんな人なんですか」

「すごく若くてねえ、多分まだ中学生じゃないかなあ。正義感に溢れる少年という感じですね」

「若いですね」

「彼の熱意に負けて……というか、彼の生き方を見て、目が覚めましてね。ボクは真人間になったんです」

「エリコの彼の連絡先とかってわかりますか」

「さすがにそれはわかりませんね」

「そうですか」

「では、そろそろ店に戻りますね」

「はい。ありがとうございます」
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