おにぎり丼。

■新しい日常

『ファーストフーズ1号店。

赤い屋根の元気なお店!


一番おいしいファーストフード!!


★秋の限定メニューは、栗バーガー丼です。

とろ~りアツアツの栗かのこを挟んだ美味しいおやつバーガーをお米の上にどーんと乗せてしまいました。


★デザートには、甘栗シェイクがおすすめです。

まるごとの甘栗がごろごろ入った贅沢なシェイクです』



太いペンで書かれた丸みのある文字が、模造紙の上に行儀良く並んでいる。



「こんな感じでどうかしら?ねえ、どう思う?みどりさん」


ポスターカラーペンを手にした女性が私に尋ねる。


「良いんじゃないですか。きれいに書けてますよ。由美子さんは字がとても上手ですね」


「あ~良かった。みどりさんにそう言ってもらえると安心するわ」


由美子さんは、1号店で一番古くからいるアルバイトだ。


15歳からアルバイトを始めて、今年で20年目だという話だ。

主婦をしながら働いていて、中学生の息子がいるらしい。


由美子さんの旦那は、同じくこの店で働く社員だ。

美しい由美子さんとは対照的に、地味で冴えない小男だ。

飲食店で働いてはいけないのではないかというギリギリのラインの気持ち悪さで、店の嫌われ者である。


由美子さんの旦那……ヨッチーは今日は厨房で栗バーガーの仕込みをやっている。


ヨッチーは体が弱く、頻繁に気管支をやられるので、今日も『ぐぼっ』とか『ぐひゃ』とかいう咳とうめき声の中間のような声が厨房から聞こえてくる。
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