おにぎり丼。
遺書は、そのときは、もうカバンの中に入っていたから、僕は、カバンごと奪って逃げたんだ。

まさか、本当に、そのあとに自殺してしまうとはね。

ショックだったよ。

もっと、きちんと説得していれば、と悔やんだよ。

せめて、遺書を返してやりたいと僕は思ったよ。

遺書も残さずに死んだら、家族は余計に悲しむだろうと。

思えば、こんな、仏心を出したのが間違いだったのだが……。

さて。

遺書だが、そのままの状態では、とても人に見せられるものではなかった。

僕とエリコにとってはね。

僕は、行き着けの漫画喫茶に行って、遺書を切り張りして、世間に公表できるレベルに直したんだ。

切り張りをして、コピーをとって、原本は捨ててしまった。

それが、僕の犯した最大のミスかな。


その時、僕は、軽い気持ちだった。

人が死んだのはショックだったけれど、僕とは関係ないことだ。

そう思っていた。

エリコから定期的に金を貰うのは、世間的に見て、あまり良いことではないというのはわかる。

でも、ヒモだって、同じだ。

ヒモは、迷惑な存在かもしれないけれど、犯罪ではない。

僕は、たいして悪いことをしているとは思わなかった。


その軽い気持ちが、大変な自体を招いてしまった。


今度は、僕自身が脅迫されることになってしまったのだ。
< 177 / 202 >

この作品をシェア

pagetop