おにぎり丼。
「君は疑うということを知らないようだな」

ヒトシは言った。


いつもの軽自動車の中。

フロントガラスからは、光り輝く観覧車が見える。

「中学生の息子が嘘を言っているかもしれないぞ。それに、身内の証言だからなあ。不利なことは言わないだろうし」

「でも、実際に、全くやましいことがなかったとしたら、嘘なんてつくわけがないじゃないですか」

「うーん。確かにそれはあるなあ。みどり君、冴えてるな」

「私たちは決して犯人探しをしているわけじゃないんです。それを忘れないようにしないと」

「ああ。そうだな。俺たちがしているのは、探偵ごっこじゃない。ただの嫌がらせだ。これはチャンスだからな」

「ええ。この機会につぶしてやりましょう」

「おいおい。つぶすのはやりすぎだ。うちの傘下にするのが目的だ」

「そうでしたね。2号店が、経営の主導権を握れるように頑張ります」


魔法瓶に入った熱いカフェオレを飲みながら、私たちは遅くまで話していた。

話題は尽きなかった。

たまに訪れる沈黙も、私にとって心地よいものだった。
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