おにぎり丼。
ヨッチーは、薄っぺらいインディゴブルーのジーンズに、灰色のフリースという服装で現われた。

決して汚い服を着ているわけではないが、ぼさぼさの髪と不精髭が、不潔な印象を与えている。


「ねずみ小僧みたいですね」

私が言うと、ヨッチーは

「それを言うならねずみ男だろ?」

と答えた。


夕暮れ時の公園。

並んでベンチに座る私たちを通行人は、不倫カップルだと思ったかもしれない。

「今日は何でボクを呼びだしたの?」

薄ら笑いを浮かべてヨッチーは言った。

もしかしたら、愛の告白を期待していたのかもしれない。

相変わらずきもい男だ。


「今日は重大なお知らせがあって来ました」
私はそう切り出した。

「ヨッチーさんのまわりで、最近何かかわったことが起こってませんか?」

「ああ……」

「けっこうそれで悩んでいるんじゃありませんか?」

「まあ、そうだな」

そう言いながら、ヨッチーは涙ぐんだ。

昨晩、ヨッチーの勤務中に、ロッカーに入れていた私服が隠されて、かわりにサンタクロースの衣裳が入っていたことを思い出したのかもしれない。

変だけど、季節的にぎりぎり許される服装だったので、ヨッチーはサンタの衣裳で家に帰ることになった。

「ヨッチーさんに嫌がらせをしている犯人を知ってしまったんです」

私が言うと、ヨッチーは目を見開いた。

「私、見ちゃったんです」

「誰だ?」

「知りたいですか?」

「おい、誰なんだ!?誰がやったんだ!?」

ヨッチーは私の方に身を乗り出してきた。

「……エリコ」

私は一言、そう言った。

「エリコが!?」

「はい」

「嘘だろ?」

「嘘だと思うなら、エリコのロッカーを見て下さい」

「何!?」

「見てきたらどうですか」

私がそう言うと、ヨッチーは無言で立ち上がり、そのまま走って行った。

店に行ったのだろう。
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