おにぎり丼。
いつもの平和な午前の光景だ。


姉の作った料理は、まずまずの出来だった。

「美味しいじゃん」

と私が誉めると、姉ははにかんだ。

「みどりちゃんにそう言ってもらえると嬉しいわ」

「それにしても、急に料理に目覚めるなんて、何かあったの?」

「ふふん。まあね」

「好きな人出来たとか」

「てへへ」

「どんな人?」

「お店のお客さんなんだけど、格好良い人がいるの」

「へえ」

「まだ3回しか会ったことないんだけど、私のこと指命してくれてね」

「その人の好みが、料理好きの家庭的な女の子なの?」

「そうなのよ」

「お姉ちゃん惚れやすいからなあ。またすぐに飽きるんじゃないの」

「そんなことより、ヒトシとはどうなのよ」

「最近はあんまりかなあ」

「前はよくデートしてたのにね」

「ヒトシ、仕事が前の倍になっちゃったからね。1号店の経営も任されてるから忙しいみたい」

そう言いながら、何だか言い訳をしているような気分になった。

ヒトシ……。

最近めっきり構ってくれなくなってしまった。

連絡も、ヨッチー絡みのことだけだ。


「そういえばさ」

姉が言う。

「え?」

「ヨッチーのことで報告することがあったりしたら、ヒトシとデートできるわけでしょ?」

「まあ、そういう報告のときは、直接会って話すことになると思うよ」

「じゃあ、ヨッチーの遺書の謎を解けば、堂々とデートに誘えるんじゃない?」

「まあ、そうだけどさあ、それ目的で遺書のことを調べるのってどうなのかな……」

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