おにぎり丼。

■ラブホテルにて

姉は、出勤前の準備で、念入りに化粧をしているところだった。

「ただいま」

私が言うと、姉は、アイラインを引きながら、

「おかえり」

と答えた。

「お姉ちゃん」

「何?」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「恋愛相談?」

「ううん。お姉ちゃんの先輩のことで」

「先輩って、この間亡くなった?」

「うん」

「先輩がどうかしたの?」

「その先輩のやっていたスナックの名前ってわかる?」

「うーん。なんだったかな。ヒイラギ、じゃなくて、ポテトじゃなくて……」

「ポプラン?」

「そうそう!あれ、みどりちゃん、なんで知ってるの?」

「ヨッチーの行きつけの店だったの」

「えー。すごい偶然!」

「今日行ってみたら、ポプランのママが殺されたって聞いたから、びっくりしちゃって」

「それって、ヨッチーの自殺と何か関係あるわけ?」

「わかんない。でも、こんなすぐに死んだりしたら、何か関係がありそう」

「そうだね」

「お姉ちゃん、ポプランのママが殺されたホテルの名前、わかる?」

「友達に聞いたらわかるかも」

姉は、そう言うと、ケータイを取り出して、すばやくメールを打った。

5分も経たないうちに返信がきた。

「ホテル ペンギン だって」


ホテル ペンギン。

近所では有名な大きなホテルだった。

巨大な金色のペンギンの像が、建物の屋上から生えていて、とても目立つ。

バブルの頃に作られたのだろうか。

恐らく、無駄にお金がかかっているのだと思う。

晴れた日には、うちのベランダからもよく見える。
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