くちづけのその後で
「俺の名前知ってる?」


「……早川さん、ですよね?」


あたしより背の高い早川さんを見上げながら、控えめに言った。


「ちゃうよ!下の名前♪」


「あ、ごめんなさい……」


あたしが謝ると、早川さんは笑顔で口を開いた。


「賢(ケン)って言うねん!“賢い”って書いて、賢!」


彼は笑顔のまま、タバコに火を点けた。


「賢って呼んでや♪」


満面の笑みを見せる早川さんに、どう答えればいいのかわからなかった。


< 25 / 808 >

この作品をシェア

pagetop