【短】雪の贈りもの
その日買ったルミエールは、甘いものが苦手な僕を配慮してくれたような、甘さを抑えた優しい味わいで。

多少美化されてはいたかもしれないけれど、こんな美味しいプリンは初めて食べたとさえ思った。

僕は箱に残ったもうひとつのルミエールに視線を落とした。

なんとなく勢いで『2つ』と言ってしまった自分を思い出し、苦笑い。

明日の朝食にでもしようか。

真っ白なプルプルの表面を見つめると、自然とそこに彼女の顔が浮かび上がって見えた。

──キラ。

粉砂糖が一瞬、輝いた。



それから1ヶ月と少し、出張で隣町まで行っていた僕は、出張を終えて帰るなり彼女の店へ向かった。

けれど、そこには高校生らしきアルバイトの女の子が立っているだけで。

軽く肩を落とした僕は、自分のアパートの近くのコンビニへ足を運んだんだ。

夕食用の弁当と飲み物を買う為。

そこでまさか彼女に会えるなんて、思いもせずに。

弁当横にたまたまプリンの並ぶ棚があり、ルミエールを思い出した僕は、チラッとその棚を見つめた。

そのすぐ目の前にいたのが、彼女だった。

僕は心臓が跳ね返るほどに驚いた。


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