【短】雪の贈りもの
え……?
私はそこで携帯を床に落とした。
どうして?
どうして雪男さんは、私の秘密を……?
しばらく固まったまま、床に転がる携帯を見つめた私は、あるひとつの答えを導き出した。
まさか、そんなはず……。
でも、もし、そうだとしたなら……。
僅かに震えた指先で落ちた携帯を拾い上げると、私は胸に手を当て、速まった心臓を落ち着かせてから、その続きを読むべく画面に視線を落とした。
───────────*
“耳が聴こえません”
けれど、驚きよりも納得の気持ちの方が大きかった。
余計なものを受け入れない代わりに、彼女は見つめる力を誰よりも強く持っているんだ。
艶やかで大きな瞳は、誰よりも輝いている。
誰よりも澄んでいる。
そしてその目は、動く口をしっかりと見つめ、言葉を読み取る……。
君の瞳は2役を上手にこなしているんだ。
レジの隣には新作ケーキのポスターや、スタッフの自己紹介が貼られていた。
そこに彼女の写真を見つける。
──有希子──
“誠心誠意努めます。甘く優しい光をお客様へ”
その紹介カードの下に、小さく誕生日が記されていた。
一月半後か……。
僕は心の中の手帳に、彼女の誕生日をしっかりと書き込んだ。