恋〜彼と彼女の恋愛事情〜


「あそこにあるお店なんだけど・・・バーになっててさ・・ふふっ」

まだ笑ってる。

「笑いすぎ!」

「ごめん。・・・でも、おかしくって・・」

意外。

誤ったりできるんだな。

「1時間でいいんだけど、平気?」

まぁ、家に帰っても今日はやることねーし・・・。

「いいよ」

軽く返事をすると

「本当に!?いいの?」

目を大きく見開く。

「何だよ。誘ったのはそっちだろ?」

「え?あ、うん、そうなんだけど。・・・断られるかと思った」

「あ?なんで?」

「だって、私だよ?」

少し悲しそうな顔の香奈枝に

「なんだよ、それ」

と笑って答えると

「ありがとう」

恥ずかしそうにお礼を言う。

意外。

お礼とか言えるんだな。

「じゃ、こっち」

そう言って、細い路地に入っていく。

・・・大丈夫かよ。

・・・俺、襲われたりしないよね?

「ここの2階なの」

少し古くなったビルの階段を上がる。

お店のドアには『準備中』の札が下がっている。

香奈枝は遠慮なくドアを開ける。

・・・俺、生きて帰れるよね?


「悠人さん」

香奈枝が声を掛けると

「おお、香奈枝来たのか」

奥で準備をしていた男の人が笑顔でこちらを見る。

・・・良かった。

どうやら知り合いらしい。








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