82歳、ベッドの上で

□楽しくない



毎日ベッドサイドに行く度に



『初めまして』


『こんにちは』


『どなた?』



最初はやっぱりショックで
泣きそうだったけど


最近は慣れてしまった




ただ、やっぱり

おばあちゃんの中には
私は存在してない


そう思ったら
やるせない気持ちになった



見返りを
求めるわけじゃない


でもこんなに
一生懸命なのに


何も残らないなんて
悲しすぎる


何も出来ない
自分が悔しいよ




おばあちゃんの笑顔は
人に対する礼儀



単なる作り笑顔




だから話をしていて
笑うことは少ない



『そうですね』


そう言いながらの
微笑みだって


上辺だけ




だって何も
楽しみがないんだもん


寝ているだけで



あとは近くにいる
知らない女の子である私が


話しかけてくるから
返事をして…




私が席を外して戻ると
おばあちゃんは毎回

無表情で横を向いているか
目を閉じている



おばあちゃんから
話題を振ってくることは


1度もないんだから…



きっと楽しいことなんて
ないんだよ、きっと
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