野獣狂想曲

《音色》

あの雪の日から4ヶ月が経ち、私は中学2年生になった。

あの日以来私の心は空っぽになってしまった。





「陽菜ーっ!」

放課後、掃除場所から教室に向かっていた私を後ろからの声が呼び止めた。

この声は玲奈だ。

振り向くと案の定玲奈がこっちに向かって走ってきていた。



後藤玲奈。
中学に入学してから初めてできた友達で、今では親友と呼べる仲。



「今日から部活始まるんだけど、陽菜はどうする?」

私に追い付いた玲奈と一緒にまた歩きだした。
玲奈は調理部に所属している。
今まで放課後はピアノの練習に費やしていた私は、どこの部活にも所属していない。
ピアノを失い、暇ができてからはよく調理部に遊びに行っていた。
そのこともあり、玲奈からは入部を勧められている。

「んー、まだ保留」

「そっか」

玲奈は淡白に答えた。
多分、まだ私が決めかねていることに気付いてたんだと思う。

「何か夢中になれるもの、早く見付かればいいね」

「…うん」

私は本当にピアノが好きだった。だから、ピアノを失った今、それに代わる何かを探していた。



夢中になれる何か。





ピアノを忘れさせてくれるような何か……。



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