神様の悪戯


4月。

私は高校に入学して3度目の春を迎えた。
春は嫌いじゃないけど、一生好きにはなれないと思う。



そんな季節に私は貴方に出逢った。



入学式の終わった体育館はシーン…と静まり返り、物寂しげに佇んでいる。


昼間はやっと、暖かさを感じてきたのに外は生憎の雨。


昼過ぎから降り出した雨は止む気配もなく、せっかく咲いた桜に粒を落とす。





最悪だ。


入学式でピアノの伴奏を頼まれたのは良かった。

ただ、ピアノの脇に腕時計を忘れた事に気が付いて家の前まで来ていたのを引き返してきたのだ。



あの腕時計はお母さんの形見。


大事な物だから、明日取りに行くなんて考えられなかった。


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