ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「どうします? のんびりしている暇は無いと思いますが?」
上総の声は、何処までもゲームをしているかのように楽し気だ。
『赤鬼は確かにその石に興味を持ち欲してはいるが、真の目的は茜、お前だ』
玄鬼の言葉が茜の脳裏をかすめる。
茜は上総の、赤鬼の目的は初めから『これ』だったのだと、思い至った。
敬悟に茜を鬼隠れの里に導かせ、玄鬼に茜の力を引き出させ、有る程度、『守りの石』をコントロールさせる。
そして、茜自身が自分の意志で、上総の元に来ざるを得ないようにし向ける。
それは十六年前、敬悟が茜の家に引き取られた時から張り巡らされた、周到で狡猾な罠。
玄鬼の遺した言葉を生かすことも出来ず、その罠に絡め取られて、もう身動きさえ出来ない。
悔しさと自分の不甲斐なさにギュッと唇を噛みしめながら、茜は胸に抱えた敬悟の顔を見詰めた。
もはや、その命の灯が消えかけているのが、茜にも分かった。
――今、出来ること。
今、出来る最善のこと。
ううん、違う。
敬にぃならきっと、『お前がしたいことはなんだ?』と問うだろう。
今、私がしたいことは、たった一つ。
この人を死なせないことだ。
なら、答えは一つ。
「……分かった」
生きてさえいてくれれば、生きてさえいれば、きっと道は開ける。
「あなたの……言う通りにするよ」
茜は、敬悟の頬に唇を寄せると、そっと口付けた。
頬を、一筋涙が伝う。
ゴメンね、敬にぃ。きっと、たくさん怒られちゃうね……。
ああ、そうか。記憶を封印されてしまうんだから、怒りようがないかぁ。
こんな時なのに、笑いがこみ上げて来る。
「お願い、します。敬にぃを助けて……下さい」
震える声でそう言うと、茜は上総に頭を下げた。