魔神の魔術師

三節

 「嘘つきぃぃっー!!」
突然の砲口は、人ごみの視線を一気に集め真ん中で演技をしていた男性は鋭い眼を少女に向けた。
「魔術師ーっ!! 私を今まで騙して…馬鹿、馬鹿っ!!」
溜めていたものを吐き出すように次々に飛び出す罵声。下を向いて思い切り叫び、声は次第に枯れたように衰えていく。その場で膝を突いて、涙は白い道に一滴落ちる。
回りに居た女性客は覚めた目を男に向けながら、次々に去る。残った男と念力のアシストをしていたデブ。泣き崩れた少女と、呆然と立つ尽くすジルクだけがその場に残った。
「リミリアっ、なんてことをいうんだっ!! お前は破門だ!」
「似非魔術師の弟子なんてこっちからお断りよっ馬鹿っ!!」
吹きかけるだけ吹きかけて、少女は涙を拭いながら街の中へ消えていく。呆然と少女の背中を見つめるとジルクは、大きく重いため息混じりに男達に冷たい視線を送る。
「あんた等さー、いたいけな少女の夢ぶち壊すなよ。思春期の女の子はいろいろと大変なんだぜ?」
「う、うるさいっ。くそ…あの小娘」
忌々しげな目で少女の消えた方向を睨みつつ、逃げるように男達は去っていった。完全に一人放置のジルクは、迷子の犬状態。
何処へ行けばいいのか、先ほどのイザコザで曖昧になった。
「えーっと、確か魔術図書館に行きたかったんだっけか?」
半ば方向音痴の様に暗中模索をしながら再び歩き出す。
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