想い出の中の虹
瞳いっぱいの涙。


「さ、食べよ。美羽。」


「ん。」


太めの麺を一本。


「美味しいね。」


瞬きをするたびに落ちる雫。


「美羽…………美味しいな。」


「……うん。美味しい。」


流れる涙に込められた想い。

それを、どう解釈すれば良いのかなんて理屈はどうでも良かった。

今、目の前にある冷めたどんぶりの中身を空にする。

二人で一緒に。


「ごちそうさまでした。」


ほんの少しの量を、俺より少しあとになんとか食べ終えた彼女の瞳には、もう、流れ落ちる涙は見えなくなっていた。


「ありがとう。瞭くん。」

再びの感謝。


「出ようか。」


「うん。」


繋ぐ手の温もりと、瞳の奥の哀しみが交差して、いっぱいの筈の胃袋がキリッと痛んだ。


< 25 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop