揺れる虹
「…………ごめん。迷惑…だったよね。」


きっと、やっとのことで作り出していただろう笑顔が一瞬で消えた。


「それ、持ってく。」


さっき受け取った小さな包みに手が延びてきた。

それを無くしてしまうわけにはいかない。

体が先に動いていた。

伸びてきた腕をぎゅっと引き寄せ、胸の中に閉じ込めた。

熱い吐息が胸元にたまっていく。

何にも言わずに抱き締めていた。

何にも言えなかったから。

言葉が見付からなかったから。

ただ、今を感じていたかったから。


だんだんと力を抜いて体を預けてくる。

ほんの少しの重さが心地好かった。


「美羽。」


「…………ん?」


髪を撫でながら、そっと襟元に指を這わす。


< 27 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop