わたしが本当に好きな人

2進展

「かなり重症だな……」
朝起きるたびに溜め息が増えている気がする。
踊り場で先生に「あんなこと」を言われてから、毎日のように先生が夢に出てくる。
嬉しさで思わず顔がほころんでしまうときもあれば、切なさで枕を濡らすこともある。
だけど、どんな夢を見ても、そのたびに先生に会いたくなる。
先生にとってわたしは単なる生徒でしかないと分かっていても……
この動揺を先生には知られないように、国語の授業は真剣に聴いた。
惚れた贔屓目は抜きにして、先生の授業は本当に分かりやすく丁寧で、かといってスローペースというわけではなかった。いわゆる要領がいい。
余った時間に話す冗談もおもしろくて……
しかし、残酷なことに、授業が楽しいということはそれだけ終わるのも早く感じるわけで……
同時に先生に合える時間もあっという間に感じてしまう。
いっそ、最低の授業だったら楽なのに……
矛盾した考えだと頭でも分かっている。

「現代文の範囲はここまでだから」
ある日の授業で先生はそう言った。
そう、もうすぐ中間考査だ。
わたしは早いうちから試験勉強に取り掛かった。
そうしないと先生を想う気持ちでどうにかなってしまいそうだから。
その甲斐あって、考査当日まで、ほんの少しだけでも先生のことを考えずに済んだ。
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