蝶々
・・・話が続かない。


『じゃあね!私もこれからレポート書くよ』

『うん、本当にありがとう!また明日ね』


今度は菜穂が引き留めてくれるんじゃないか。

菜穂だって私と話したいでしょ?
そんな勝手な考えが胸を占める。
私もじゃあね、とは言ったが受話器をそのまま耳に押し当てていた。


ツッ・・・プープープー・・・


聞こえてきたのは、残酷にも単調なこの音。
菜穂の温かい声は聞こえてこなかった。
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