I love you(短編集)



真夏の太陽に熱されたアスファルトに、目を瞑りごろんと転がる彼。


大の字に広げられた腕と足は程よく筋肉がついていて、逞しいのに、綺麗で。それでも、破れたシャツや、体に刻まれた無数の傷と痣が、痛々しかった。


屋上のドアの前に立ってそんな彼を暫く眺め、ゆっくりと足を進め傍にしゃがみこむ。

制服のスカートのポケットを探り、いつものように絆創膏と消毒液を出して、目を瞑っている彼の顔の、まだ出来たばかりなのだろう生々しい傷跡に触れる。


「…っ」

眉間に皺を寄せた彼が、閉じていた瞼を微かに震わせてゆっくりと目を開ける。その視線に微笑むと、驚いたように目を見開いて、頬を染めてそっぽを向いた。


彼の顎に手を当てて、顔の向きを戻す。
不機嫌そうな表情に、また口元が緩む。
赤い頬が、少し潤んだ瞳が、胸を疼かせる。


私は口元を緩ませたまま、絆創膏のテープをピリピリと剥がし、なるべく慎重に傷口に当てた。


やはり痛いのか、表情をゆがめる彼。

小さく呻く声が、耳をくすぐる。




負けを知らない彼が、私だけに見せる、その顔、その声。





ああ、また





愛しさが、あふれた。







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