満ち足りない月




こちらにゆっくりと近付いてきながらラルウィルがそっと言った。

その視線の先には窓がある。


ラルウィルの中にしんしんと降り続けるあの日の雨が木霊(こだま)した。


――…

冷たくなったしわだらけの手。

静かに安心したように眠る“その人”の顔。

ベッドにの隣に飾られた摘み取ったばかりの赤い薔薇の花。


少年はただ一人泣いていた。




セシルは遠くを見るように窓を見つめているラルウィルの横顔を目にしながら、


同じなのね。

ポツリとそう思った。


互いの過去を決して話さず、一人は偽りのない名を名乗り、期限の分からない居場所に縋(すが)っている。


ねえ、ラル。

嘘で固めたこの関係に意味などあるの?
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