満ち足りない月




夜の静寂に包まれていた屋敷だったが、朝はここが森である為か、鳥の可愛らしい声が聞こえてくる。

ホールの上にある小さな窓から差し込む朝日の光が漏れるかのようにホールの一部を照らしていた。


その様子を見て、率直に綺麗、だと思った。



セシルもこんな場所にいた。

こことは色んな事が大きく違っているが。


例えば、こことは違って、とても綺麗だし、汚れてもいないし、よく磨かれている。

でも、こんな鳥の声なんて聞こえないし、寧ろ鳥なのはセシルだった。


いつも喚いて嘆き、鳴く(泣く)。

しかし誰もそんな大きな鳥籠から出してやくれないのだ。
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