満ち足りない月




やっと手に入れたものがある。


私はそれを絶対に守り抜く。

どんな事をしてでも、必ず…。



カチャカチャ。

ふいに鳥の声ではない、物と物がこすれあう音が聞こえてきた。

それはよく聞いていた音で、セシルはいつもその音が好きだった。


知らぬ間に足は動き、セシルはホールの通路を歩いた。

そして段々その音は大きくなり、ドアがないその部屋を覗いた。


「何だ、起きてたのか」

ラルウィルは皿を持ったまま、覗いていたセシルを見つけた。


そこは調理場だった。

決して大きくないけれど、小さくもないキッチン。


何だか温かくて優しい色使いの綺麗な所だ。

壁のタイルは淡いオレンジなので、それがこうも明るい雰囲気を出しているのかもしれない。
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