満ち足りない月




口を塞がれたまま、セシルは背筋がゾクッとするのを感じた。

やがてセシルにも分かるくらいに草が踏みつけられる音が聞こえてきた。


セシルはごくりと喉を鳴らしたが、それさえも相手に聞こえるような気がした。

それにしても吸血鬼の聴覚は凄い。こんな小さな音を聞き分けるのに私とこんなにも秒差がある。

やはり人間と体の作られているものが違うのだ。


草のサク、という音が少しずつ近づくに連れてラルウィルの姿勢が低くなる。

同時にセシルとの体の接触する部分が多くなってきた。


ちょ、ちょっと……


声をかけたかったが、今は状況が状況だ。耐えるしかない。
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