君に染まる(前編)
「優となんかあったのか?」
…もしかして…変な誤解してる?
怖い顔でつめよってくる先輩に
必死に首をふった。
「じゃあなんだよ」
「み、水被ったから…
着替え借りただけ…です…」
「水?…ファンの奴等にやられたのか?」
うつむいて黙り込むあたし。
「どうなんだよ」
「…分かりません」
誰か、なんて…
確認するひま無かったし…。
「…悪かったな、俺のせいで」
ピアノに体重をかけていた先輩は
体を起こしてあたしの頭に手をのせた。
「もう少し…頑張れ」
「え?」
思わず顔をあげた。
「もう少しって…どういう意味ですか?」
「…お前をいじめてるファンの奴等を
かたっぱしから探してる」
…探してる…って?
「これが結構いんだよな…
上靴やった奴等、物とった奴等、
学科も学年もバラバラで…」