君に染まる(前編)


「…もしかして未央ちゃん、恋してる?」



「え…」



驚いて目を見開くと、
堀河さんは優しく笑った。



「これってさ、
好きな人を想いながら作った曲でしょ?」



「ど、どうして…そう思うんですか?」



「うーん…なんかそう感じるから。
切ないというか、なんというか…」



さ…さすが堀河さん…。



楽譜を眺める堀河さんに思わず感心する。



気付かれたなら仕方ない、かな…。



「…お兄ちゃんには
内緒にしてくださいね?
きっと、大騒ぎしちゃうから」



そう言って、
堀河さんから楽譜を受け取り、
ゆっくり口を開く。



「実は…彼氏ができたんです」



「え、そうなの?」



驚く堀河さんにこくんと頷く。



「その人、もうすぐ誕生日で、
だけどお金持ちの人だから
普通のプレゼントじゃダメかなって…
それで曲を贈りたくて作曲を」



「そっか…
まあ、確かに吏雄には言えないね。
彼氏ができたってだけでも
何するか分かんない上、
未央ちゃんが彼氏の為に
一生懸命作曲してるなんて知ったら」


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