君に染まる(前編)
「未央と堀河さんが一緒にいるとこ見たら
急にお店に飛びこんじゃって、
気付いた時には堀河さんを殴ってたの」
「突然だったから
あたしも楓ちゃんも固まっちゃって。
そしたら今度は未央ちゃんのことを
殴ったみたいだったから
さすがにヤバイと思って
お店に入ろうとしたら創吾が出てきて…」
「それで、あたしが未央、
美紅先輩が獅堂先輩、って分かれたの」
「未央ちゃんが
ケガさせられてないか心配だったし、
創吾のことだから
どうせ謝りもしなかったろうしね」
渋い顔をした美紅先輩は
堀河さんに歩み寄った。
「創吾が迷惑かけてすみません。
大丈夫ですか?」
「あ…はい、大丈夫です」
急に美紅先輩に声をかけられ、
慌てて立ち上がる堀河さん。
立ち上がった堀河さんと目が合う。
堀河さんは殴られた左頬から手を離し、
小さく笑った。
「未央ちゃんの彼氏…
俺達がキスしてたって言ってたよね」
「はい…」
「…2人でピアノの中覗いてる時、
外から見たらキスしてるように
見えたのかもしれないね」
「…あ」
だから先輩、あんなこと…。